ある朝起きたら頭から耳が生えていた
 
「………は?」
 
 
 
 
 
耳が生えてから数日。俺はずっと部屋に引き籠もっている
未だに頭の上で存在を主張しているそれは、瞬きしようが目を擦ろうが消えることはなく気のせいということで片付いてはくれなかった。
それどころか落ち着いてから気がついたが耳だけでなく尻尾も生えてきていた
あの朝、俺の姿を見てパニックを起こした両親は病院に連れて行こうとしたが、俺が頑なに拒んだためとりあえず数日様子を見ようという
ことになった。今の自分の状態が異常なことはあの時の頭でもさすがに理解はできていたが、こんな姿を誰かに見られたくなかったのだ
 
この数日体を動かしたり触ったりしていくつか分かったことがある。生えてきた耳はどうやら兎の耳らしいということと、髪の色が変わっ
ていたこと。本来耳のあるべき場所に何も無く人間の耳は無くなっていたこと。耳と尻尾は自分の意思で動かせるししっかり神経が通って
いるということ。…一回試しに取れないかと耳を思いっきり引っ張ってみた時はあまりの痛さに死ぬかと思った。あと、これといって体調
が悪くなる様子が見られないということ。…元に戻る様子も全く見られないこと。
 
「…体調に影響がないってことは悪い病気ではないのかな…や、でも異常ではあるんだろうな…耳、無くなってるし」
 
ベッドの上で体育座りをして顔を埋める。気分を代弁するかのように耳が力なく伏せられていく。いくら体調に影響がないとはいってもこ
のままというのは困ってしまう。この春に高校
2年生になったばかりでまだまだ何十年と生きなければならないわけで、ずっと引き籠もっ
ているわけにはいかない。ここは両親の言うとおり医者に診てもらって原因究明に努めるべきなのだろうか。でも、こんな姿を誰かに見ら
れるというのは…やっぱり抵抗がある
そんなことをぐるぐると考えていると、ふっと辺りが暗くなった。不思議に思い顔を上げてみると、いつの間にか目の前に見知らぬ男が座
ってじっと自分を見ていた。
 
「…………」
 
「………ふむ」
 
いきなりのことに頭が回らずフリーズしていると、男はふむだのこれはまた…だの言いながら俺の耳に触れようとしてきた。男のその行動
にハッとし伸ばされた手をはたき落として距離をとろうと後ずさった…といってもそう広い部屋ではないのですぐに壁にぶつかったけれど
 
「あ、あんた誰だよ!なんなんだよ!てかどうやって入ったんだよ!!」
 
なんとか復活した頭をフル回転して思い付く言葉を叫んだ。声は裏返っていたし震えていた
 
「そう喚くな少年。ちょいと落ち着け、わしは怪しいもんではない」
 
「十分怪しいだろうが!いきなり人の目の前に現れてなんなんだよ!」
 
「だから落ち着けとゆうとるじゃろが。混乱した頭じゃ理解できることもできんというもんじゃ」
 
「こんな状況で落ち着けるわけないだろ!!」
 
目の前に男と言い合っていると下の階にも聞こえたのか1階にいた母さんが何事だという様子で部屋に入ってきた。母さんは男を見て固まっ
ていたが、しばらくして困惑した表情で「…どちら様ですか?」と尋ねた。どうやら母さんの知り合いというわけでも無さそうだ
 
「おお、そういえば名乗っておらんかったの。わしは美作忠正、玲瓏学園っつー所で学園長を勤めているもんじゃ」
 
母さんに尋ねられて男はベッドから降りて母さんと向き合い姿勢を正すとそう名乗った
 
「玲瓏学園…?」
 
「うむ。ちぃとばかり山奥にある学校だから知らんだろうがちゃんと実在する学校じゃぞ。まぁそんなことより、おぬしはこの少年の母親か?」
 
「え、ええ」
 
「少々少年のことで話がしたいんだがいいかの?」
 
「話…ですか?」
 
「そうじゃ。おぬしら、その少年の体の異変について知りたかろう?」
 
美作と名乗った男の問い掛けに母さんも俺も目を見開いた
 
「えっ…あなたもしかしてこの子の症状について何か知っているの?!」
 
「当然じゃ。なんせわしと少年は同類じゃからの」
 
二人のやりとりを横で眺めていた俺の方をちらりを見ながら美作が言った。その言葉に落ち着いてきた頭が反応した
 
「…同類?」
 
ぽつりと呟いた俺に向かって「おお少年、やっと落ち着いたようじゃの」と言いながら愉快そうに笑っていた










とりあえずここまでです!
あともう1話自宅でのうだうだにおつきあい下さい。

獣耳という管理人の欲望に忠実なお話になっておりますのでこれから温かい目で見守って下さいませ!
獣耳は正義!!