昼間だというのにカーテンを閉め切ったリビング。お茶をおいしそうに飲みながら9本の尾を揺らす男。そんな男を凝視する俺と母さん。
何とも気まずい空気。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
−数分前−
リビングをカーテンで締め切ったのを確認すると美作は首の辺りをいじくり始めた。それを椅子に座り頬杖をつきながらなんとなしに見て
いるといきなり目の前に黄色が広がった
 
「………」
 
「あー、やはり抑えつけとると疲れるのぉ」
 
いきなりのことに一瞬思考が停止した。台所の方からは小さく悲鳴が聞こえた。美作はこちらの反応を気にする様子もなく伸びをしたり肩
をほぐしたりしながら椅子に座った
 
「ん、おお!この香りは紅茶か」
 
「え、えぇ」
 
「うむ、わしは日本茶が好きじゃが紅茶も好きじゃぞ」
 
「そ、それは良かったです」
 
「あと何か美味い茶菓子でもほしいところじゃの」
 
「…おーい図々しいぞ客人。母さん困らせんなよ」
 
運ばれてきた紅茶の香りに嬉しそうな顔をしながらちゃっかり食べ物を要求している美作に対し少し呆れながらつっこみを入れる。そんな
やりとりの間に母さんが苦笑を浮かべながらお菓子の入った缶を持ってきて俺の隣に座った。母さんの視線は終始美作の後ろやら上やらに
広がる黄色…もとい耳と尻尾に向けられていた。本人は全く気にしていないがこちらとしては非常に気になる。
そして現在、冒頭の状況である
 
「うーむ…少年よ、年上に対する口の利き方がなってないぞ」
 
「…不法侵入者相手に丁寧しゃべるのは癪なんだよ。ていうかあんたのそれ」
 
「?どれじゃ?」
 
「それだよ!その耳と尻尾!!」
 
「ああ、これのことか。見ての通り耳と尾じゃよお主にも付いておるのじゃから珍しくも無からろうに」
 
俺が指し示しながら問うと美作は尻尾をふわふわと動かして見せて「わしの尾は9本もあるんじゃ羨ましいじゃろ」なんて的はずれなこと
を言ってくる
 
「誰が羨ましがるか!あんたさっきまで普通だったじゃん。なんでいきなり現れたんだよ」
 
「さっきまではこの首輪で抑えておっただけで、わしは生まれてこのかたずぅーとこの姿じゃ」
 
そう言って手に乗った紐状の物を見せてきた。先ほど首の辺りをいじっていたのはどうやらこれを外していたらしい
 
「だからさっきわしとお主は同類じゃとゆうたじゃろ」
 
「…あの…この子や貴方のそれは何かの病気、なの?」
 
「これは病気なんかじゃないから安心せい。わしや少年の他にも同じ奴らがおる。異様な容姿ではあるが人体に影響はない、こういう種族
なのじゃよ」
 
恐る恐るといったように聞いた母さんに、柔らかな笑みを作りながら言った美作。それを見ていたら目の奥が熱くなるのを感じて慌てて顔
を伏せた。
…なんというか…安心した。いきなり美作が現れたバタバタのせいで意識が逸れていたけれど、この男が来るまでの数日間、突然変化した
自分の姿に対する不安で頭が一杯だった。これは病気なんかじゃなくて、これは自分だけじゃない、俺や美作の他にも同じ状況の人達がい
る。自分だけがおかしいんじゃないと分かってすごく、ホッとした。
 
「…良かったわね。籐哉」
 
「……っ」
 
母さんが本当に良かったと頭を撫でてくれて、ああ限界だと思ったと同時に涙が膝でいつの間にか固く握っていた手の上にポタポタと落ち
た。そうなるともう自分じゃ抑えようがないくらいの涙が出てきてしまい、でも声を上げて泣くのはなんだか気恥ずかしくて俺は声を殺し
てしばらく泣き続けた。その間も母さんは頭を撫でてくれて、美作は見ないフリをしてくれているのかお菓子の缶を漁る音が聞こえていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「で、さっき言った通り病気ではないんじゃが、その耳やら尾やらが消えることは一生無い」
 
「……それ、マジ?」
 
「うむ、大マジじゃ。さっきも言ったじゃろう?わしらはこういう種族なんじゃ。後天的とはいえ種の特徴が突然消えるわけが無かろう?」
 
「…てことは一生、このまま?」
 
「そう言っておるじゃろうが」
 
やっと涙が落ち着いて、紅茶を飲みながらふぅと息を吐く。と、せっかく落ち着いた脳内は美作が唐突に発した言葉により本日何度目かの
フリーズを起こした。…つまりなんだ、俺はこんなうさ耳なんてファンシーなもんを付けたまま社会で生活していけっていうことか?
 
「…む、無理無理無理無理、絶対無理!」
 
自分のこれからの人生を想像して頭を抱えたくなった。母さんも似たようなことを想像しているのか顔が引きつっているのが見える。そん
な俺達の様子に気付いていないのかはたまた気付いていて無視しているのか美作はそれはもう愉快そうな声で笑っている。…一発殴ってや
りたいと思った俺は悪くないと思う
 
「まぁとりあえず我が学園に来い少年!同族のよしみじゃ!わしが面倒を見てやる!!」
 
「……はい?」
 
「諸々の手続きはわしが全てやっておいてやるから安心せい!」
 
「ま、待て待て待て待て!!」
 
愉快そうに笑っていたと思ったらそのテンションのまま何か言い出しやがった!
 
「おまっいきなり何言い出すんだよ?!」
 
「そんな姿じゃここでの生活は無理じゃろうからな!」
 
「や、そうだろうけど!そうだろうけどもっ!」
 
「うむ!我ながらにいい案である!母君もそういうことで良いな?」
 
「えっ、あの、えっ?」
 
「よし、出発は明日じゃ!さぁ準備をしろ少年よ!」
 
「よしじゃねぇよ!とりあえず分かるように説明をしろぉぉお!!」
 
 
 
 
 
その後、まともな説明もしないまま一人で突っ走る美作の流れに流されたのかなんなのか、訳の分からないうちに母さんも何故か了承して
しまい、俺の意思などどこにも挟まれないまま俺はこの男に預けられることになってしまった。










予想以上のぐだぐだ感!お察しの通り無理矢理終わらせましたとも!←
全ては勝手に突き進む美作学長と私の文才の無さのせいです☆
次からようやく舞台を移せます。他のけもみみさんもどんどん出していきたいです。